ボスニア出身の女性に学ぶ、英語習得と人生の極意
アメリカは人種のるつぼとよく言われるとおり、私がいる職場にも白人、黒人、ヒスパニック系、アジア系と様々な人種の人たちが一緒に働いています。
その中で、ボスニア出身の人たちが何人かいます。
彼らは紛争のあった祖国から難民としてアメリカに来て、いまは市民権を獲得してアメリカ人として生活しています。
私が仕事をしているチームにもボスニア出身の女性がいます。
彼女は身長が180センチ以上あり、こちらの中でも大柄な女性ですが、陽気な性格でとても親しみやすい、私と同世代の人です。
アメリカに来て20年ほどになるという彼女から、先日とても興味深い話を聞きました。
ボスニア時代の話は本人からはほとんどしませんし、事情が事情なだけにこちらからも触れないようにしているので、彼女がアメリカに来た当初の話です。
彼女はボスニア難民としてアメリカに来たときは、居住先は選べず、なすがままにいまいるネブラスカ州の街に来たそうです。
最初の数週間は補助金?のようなものが出て、住居や仕事を探すためのサポートはあったらしいですが、それ以降は全て自分でやらなければならないので、当然最初は大変だったそうです。
その中でなんとかいまの仕事に就くことができたのですが、仕事初日のこと。
まだ英語もほとんど話せない彼女は、製品出荷前の梱包ラインに配属されました。
しかし梱包用の段ボール箱を組み立てるとき、なんと誤ってホッチキスの針が手に刺さってしまったそうです!
びっくりした彼女は近くの同僚に状況を伝えようとしますが、英語でなんと言えばいいか分からないので、ホッチキスの針が刺さった手を見せるだけです。
でも近くにいた同僚は彼女の手を見た瞬間、怖くなって後ずさりするだけで助けようとしない。。。
その時は痛みも出血もなかったので、彼女はしかたなく自分でホッチキスの針を抜きましたが、抜いた瞬間、猛烈な痛みが襲ってきて血がダラダラ出始めたそうです!
結局他の同僚の手助けで診療所まで行き、手当をしてしてもらい事なきを得ましたが、実は悲劇はそれだけではありませんでした。
診療所から戻ってその日のうちに仕事場に復帰した彼女ですが、今度はこともあろうか同僚のミスで足に釘が刺さってしまいました!!
(ホッチキスが刺さった手を見て逃げた同僚と同じ人かは分かりませんが)
流石に彼女は頭にきて、誤って自分の足に釘を刺した同僚をボスニア語で罵ったらしいです!!
そしてまた診療所に行って手当をしてもらい、結局その日は家に帰ったそうです。。。
そんな壮絶な経験を、彼女は面白おかしく語ってくれました。
その時は大変だったはずですが、今では懐かしい思い出みたいです。
アメリカに来て見つけた仕事の初日に散々な目にあった彼女ですが、それでも紛争中のボスニア時代にいろいろあった経験に比べれば、全然大したことはなかったとのこと。
恵まれた日本で特に不自由なく生きてきた私には、彼女は本当に逞しく見えます。
そして彼女を見てると、英語は間違ってもいいから話すことの大切さを教えてくれます。
ボスニア出身の彼女の英語は当然完璧ではなく、私からみても文法的な間違いもあります。
彼女の英語は、学校で教わったものではなく、生きていくために必然的に習得したものなのです。
そんな英語でも、彼女はいまでは職場のチームリーダーとして、ネイティブのアメリカ人とも堂々と渡り合っています。
そして辛いこともあった過去にいつまでも囚われず、毎日ポジティブ思考で陽気に生きる彼女を本当に尊敬しています。
なんだか彼女を見てると、人生の極意を教わっているようです。